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知る・楽しむ

縫い糸の種類

糸は素材、繊維のタイプ、用途、撚り方などで、さまざまな種類に分けられます。

素材による違い

天然繊維

自然界の生物からできたもの。
天然繊維はそれぞれに自然の恵みで備わった天性があり、合成繊維には超越のできない数々の特性と味わいがあります。

絹糸

蚕はサナギ時代を外敵から守るために繭(まゆ)を作ります。この繭は、蚕が体内から吐き出す分泌物(絹糸腺液)が空気中で凝固してできた繊維の層になっています。この繭を煮て繊維の重なりをほぐして得たものが蚕糸(生糸)です。
絹糸はこの生糸を原料とした長い繊維の縫い糸で、なめらかで大変美しく、しなやかさ、やわらかさは最高です。縫いやすく、絹・ウールなどの動物性繊維の生地によくなじみます。

絹糸


綿糸

綿(わた)の木に実った種子に密生している細い繊維(綿花)を採取し、これを紡いで連続状の糸にしたのが綿糸です。
綿糸は短い繊維の縫い糸で、光沢は少なく、毛羽があるのが特徴です。熱には強いですが、濡れると縮むので同じ素材のコットン生地を縫うのにおすすめです。

綿糸


合成繊維

石油などから糸にしたものが、ポリエステルやナイロンなどの合成繊維です。
天然繊維の代用として作り出されたものですが、技術の進歩によって改良が重ねられ、今や天然繊維をしのぐ素晴らしい性能を持つものも現れています。合繊繊維は天然繊維と違って糸質にムラがなく、耐久性に優れ、強く、美しく、なめらかです。特にポリエステルの合成繊維は縫い糸に最もふさわしい品種としてよく使われるようになりました。

通常、合成繊維は蚕の絹糸腺液に相当する粘液(原液)を高分子物質から人工的に作ります。この原液をノズルと呼ばれる口金の微細な孔から連続的に押し出して繊維状としますが品種によって分子構造も異なり、メーカーによっても製造方法が異なります。
合成繊維は連続状の長い繊維が作り出されますが、これを短く切断して綿状にしたものが、合成繊維の短い繊維です。このように人工的に作る合成繊維は加工の方法によってさまざまな性能を加えることができます。

縫い糸の原料特性
  強度(gf/d) 伸度(%) 特徴
4.0~5.0 16~23 独自の優れた光沢としなやかさがあるが、
強度が弱い
綿 3.0~5.0 5~10 耐熱性があり可縫性に優れるが、
伸びが少なく強度が弱い
ポリエステル 7.0~7.5 17~21 強度・伸度ともにある
ナイロン 7.0~7.5 24~28 強度もあり、特に伸度が高い
燃焼法による繊維の見分け方
  燃焼の状態 臭気 灰の状態
ジリジリとちぢれながら
燃える
髪の燃えるにおい 黒褐色の柔らかな塊
綿 燃えやすく、紙のように
パッと燃える
紙の燃えるにおい 少量の柔らかい灰
ポリエステル 融けながらゆっくり燃える
(ススの多い炎をだす)
甘いかすかなにおい 黒褐色の硬い塊
ナイロン 融けながらゆっくり燃える 髪の燃えるにおい ガラスのように硬い塊
繊維のタイプによる違い

縫い糸は繊維のタイプによって、「長繊維(フィラメント)糸」と「短繊維(スパン)糸」の大きく2種類に分けられます。これらは用途によって使い分けられています。

長繊維(フィラメント)糸とは…

長繊維(フィラメント)糸とは長く連続した繊維のこと。天然繊維では絹糸。
合成繊維では、ポリエステル100%のキングポリエステル、キングフィット、ファイン、キングスター等の他に、ナイロン100%のレジロン、モノカラー等がこのタイプです。
原料となる1本の長繊維はごく細いので、縫い糸にするには何本か束ねて適当な太さにして「撚り(より)」をかけ安定させます。(ただし、モノカラー等の特殊なものは単一糸を使用しています。)
フィラメント糸の特徴は光沢があり美しく、なめらかで丈夫な点です。

短繊維(スパン)糸とは…

短繊維(スパン)糸とは短い綿状の繊維のこと。天然繊維の綿糸や麻糸。
合成繊維では、ポリエステル100%のキングスパン、シャッペスパン、ハイスパン等がこのタイプです。
原料となる短繊維は通常38mm~100mmの長さのため、縫い糸にするにはこれを何本か並べて、束ねながら長い糸状にします。これを「紡ぎ=紡績」といいます。できた単糸を2~3本合わせて撚りをかけて適当な太さにして安定させます。
スパン糸の特徴は毛羽がありソフトな風合いで、布なじみがよい点です。